今作の主役は、戦艦ヤマ卜(やまぼく)から飛び立った戦闘機、"Finalty"!
『SuperDepth』の続編として発表された本作では、戦艦ヤマ卜(やまぼく)から発進した戦闘機"Finalty"が主役となっており、反撃に転じてきた敵対勢力を退けることが使命。前作から継承されているカプセル式のパワーアップシステムと、無敵時間を有するボムを活用しながら、再び感動のエンディングを目指すことになる。
ゲームシステムはガラリと一変し、正統派の横スクロールシューティングとして生まれ変わっているので、空いた時間にお手軽にプレイというよりは、敵の出現パターンやボスの攻撃パターンを覚えながら、じっくりと腰を据えてプレイに挑む姿勢が望ましい。言うなれば、運の要素に左右されにくくなったため、前作にも増して己の反射神経がものをいうようになったということである。だが生粋のゲーマーとしては、こうしたシューティングのほうがより血が騒ぐのではないだろうか。
ハード的な短所を感じさせない、滑らかな横スクロールを実現
PC-9801というハードは元々がビジネスユースのパーソナルコンピューターなだけに、ゲームにおける激しい動きを表現することは不得手としている、というのが一般的な見解だった。
ゆえに、当時アーケードゲームが移植された場合でも、スクロールがガクガクしていたり、キャラの動きがぎこちなかったりと、およそ移植とは言い難いタイトルも多く見受けられたものである。もはやデファクトスタンダードとなっていたPC-9801へのソフト供給にこそ意義があり、ゲーム自体のデキについては妥協せざるを得ないのが当たり前のこととして、ユーザーにも受け入れられていた時代だったのだ。
だが、この『Finalty』ではそういった妥協をよしとせず、PC-9801の機能をフル活用して、ジャンル表記に偽りなしの完成度に仕上げてみせている。なにより肝心要の横スクロールは、一般的にGDC(グラフィックディスプレイコントローラー)制御では16ドット単位でしか行えないのだが、『Finalty』では表画面と裏画面で8ドットずらしながら描画する方法をとり、8ドット単位のスクロールを実現している。強制スクロールにおいてのみ有効なのでスクロールを止めることは出来ないが、PC-9801でも真っ当な横スクロールものが作れるのだということを証明してみせてくれた。
当時はX68000というゲームのために生まれたようなハードも存在しており、デキのよい横スクロールシューティングも数々発売されていたが、PC-9801特有のガクガクスクロールを見慣れていたユーザーにとっては、そんなものよりも『Finalty』の真っ当さにこそ驚嘆したものである。
グラフィックの描き込みやバランス調整は、市販ゲーム並みのクオリティー
PC-9801で滑らかな横スクロールを実現したことは技術的には素晴らしいものだが、もちろんそれだけでゲームが面白くなるわけではない。当時『Finalty』が人気を集めたのは、グラフィックの細かい描き込みや、程よい難易度調整なども含めて、ゲームとしての総合的な完成度が高かったからに他ならない。
まずオープニングデモからしっかりとしたものが用意されており、起動直後からフリーウェアであることを忘れそうになるほどだった。
前作で撃退したラストボスのコアが逃走を図るも、手傷を負った戦艦ヤマ卜(やまぼく)は追撃に転じることができず、艦載機を発進させる。しかしコアを追いつめたところで敵の増援部隊の反撃が......。この危機的状況を打開するため、ヤマ卜(やまぼく)の最終兵器"Finalty"が出撃する! という流れになっているのだが、前作をクリアーしている人間からすると、その演出面の抜かりなさと同時に、あのコミカルなプロローグはどこへ行ってしまったんだ! と叫びたくなる程のシリアスな雰囲気に息を呑まされてしまう。
そしてゲームを始めれば、1ドット1ドットにこだわって描かれた兵器たちが縦横無尽に飛び交い、視覚を刺激してくれる。
また敵の配置とパワーアップカプセルの供給もバランスがよく、ある程度の腕前があればサクサクと進めるため、なんだか自分がうまくなったような気分にさえなれてくる。そして各ステージの最後にはボスたちが待ち受けているのだが、それぞれがプレイヤーを惑わせる特徴的な動きを持っており、攻防を繰り返しながら弱点を狙い撃つ感覚がまたたまらない。
当時、PC-9801用でここまで楽しめる横スクロールシューティングが他にあったかと問われると、市販ゲームを含めたとしてもちょっと思い浮かばない。というよりも、同じ土俵で比較できる程作り込まれた作品が存在しなかった、と言い切ってしまってもよいのではないだろうか。
MIDIによるBGMで、サウンド面の演出にも抜かりなし
『Finalty』のBGMは、BEEP音かMIDI音源かの二者択一という、なんとも男らしい仕様となっている。MIDI音源によるBGMはかなり豪華で、プレイしながらもSF映画のワンシーンを体験しているかのような気分が味わえてしまう程だ。しっかりとゲームの世界に引き込むBGMを聞かせてくれる作品というのは今もってそう多くはないので、それを考えると『Finalty』がどれだけ作り込まれていたものなのか、あれから十余年経って改めて実感することができる。
しかしながら当時はMIDI関連の周辺機器がそれなりに高価な代物だったため、BGMを聞こうにも聞けず、悔し涙で枕を濡らしたという人も少なくなかったのではないだろうか。
もしBio_100%のファンを自負しつつも、BGMを耳にしないまま現在に至ってしまっている人がいるのであれば、すぐに動画をチェックして記憶の更新を行っていただきたい。そしてこれから誰かにBio_100%を語る際、「『Finalty』のMIDI音源のBGMは最高だったんですよ」と伝えていただければ此れ幸いである。
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コメント(1)
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- as2:2010年10月11日 00:22
Finalty最高です!
ゲーム起動後、必ずオープニングを見て、気分を盛り上げてから本編をプレイする。クリアーできてもできなくても、高得点を出し、レコード入力画面の妖しげな美しさとBGMを聞きながら達成感に浸る。
レビューにもあるように、友人からMIDI音源は最高だと聞き、押しかけて聞かせてもらった時の感動は今でも覚えています。
その後、MIDI音源を買うためにバイトし、給料が入ったその日に、バイト代を握り締め大須のPCショップに駆け込んだのは言うまでもありません。
PCもMIDIも実家に残ってますので、HDDが生きていれば次の帰省時には、久々にFinaltyをプレイしてみます。