INTRODUCTION

  • What's "Bio_100%"
  • "Bio_100%"データベース
  • 1990年代のPC事情
  • 識者からのコメント

INTRODUCTION

人気のフリーソフトを出し続けた、特異なゲーム制作集団。その名は、「Bio_100%」。

現在のようなインターネット全盛の時代を迎える前、パソコン通信上で数々のフリーソフトやシェアウェアを配布し続けていた特異なゲーム制作集団があった。

パソコン通信で知り合った仲間たちで結成されたという、総勢約20名にも及ぶその集団の名前は、「Bio_100%」(バイオひゃくパーセント)。活動時期は1990~99年頃である。

たかがフリーソフトと侮るなかれ。当時、パソコン通信をやっていた者ならば必ず遊んだことがあると言っても過言ではないほどの知名度であったBio_100%のゲームは、フリーソフトの中では最高レベルのクオリティーを誇っていた。フリーソフトといえば1人で1本を作り上げることが常であった時代、ゲームデザイン、キャラクターデザイン、プログラミング、BGM作曲などが分業で行われていたBio_100%のゲームには、純粋な面白さという点では市販ソフトとも堂々と渡り合える作品が何本も顔を並べていたのだ。よく市販ソフトのウリやうたい文句にもなっている、派手なオープニングデモ、豪華なビジュアル、迫力のサウンドなどの演出面では少し見劣りがするかもしれないが、むしろそういった市販ソフトにありがちな冗長な要素を取り払ったストレートな面白さが、Bio_100%のゲームの魅力でもあった。また、完成に至るまでにネット上で何度も公開テストを行い、ゲームとしての内容を磨き上げ洗練させていたこともBio_100%のゲームの特徴。こういう部分も、市販ソフトにはマネのできない、フリーソフトならではの良さといえるだろう。

▲ゲーム起動時のBio_100%ロゴ
▲POLESTAR by metys

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自分たちが本当に遊びたいと思うゲームを作るのが、Bio_100%。

このように、評価の高いゲームを何本も世に配布していたBio_100%だが、彼らは決して、ユーザー受けのするゲームを笑顔で作り続けていたボランティア集団ではない。商業的な成功や失敗は全く気にせずに、自分たちが本当に面白いと思い、遊びたいと思うゲームを作るというのが彼らのスタンスであり、Bio_100%のゲームを一番楽しんでいるのは、実は当の作者たちであったという。その上で、自分たち制作者を含めた多くのユーザーたちと楽しさを共有したいために、フリーソフトという形で作品を発表していたのである。Bio_100%とは、ゲーム制作集団の名称でありながら、ゲームを作ることでコミュニケーションを取り、お互いを高め合いたい者たちが掲げているレーベルでもあったわけだ。当時、そういったやりとりも、彼らのゲーム配布の場と同じパソコン通信上で熱く行われていたのである。

ゲームが一番ゲームらしかった時代に、パソコン通信が結びつけた仲間たちがコミュニケーションを取り合い、いい意味で好き勝手に作った珠玉のゲームの数々……。本サイトは、そんなBio_100%の作品やメンバーを、当時のユーザーに大いに懐かしんでもらう場所である。当時の思い出をフィードバックさせながら、あれから十数年経ってより熟成したメンバーのコメントなども、楽しんで読んでもらえれば幸いである。

▲Owl-Zoo by 羊男

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オレンジ果汁100%みたいな脈絡無いネーミングだと素晴らしい

Bio_100%の結成は、ASCII-NETのフリーソフト作家仲間であり、友人関係でもあったalty、metys、羊男の3名が遊んでいた際に、「フリーソフト作家仲間達で同じ名前を掲げて作品を出していったら面白い」という話になったのがきっかけであるという。

まず、その掲げる名称について、ある中華料理屋で食事をしながら3人で検討していたところ、誰かが飲んでいたオレンジジュースを見たmetysが、「オレンジ果汁100%みたいな脈絡無いネーミングだと素晴らしい」と発言。その後、当時のfjやASCII-NETで高名であった「void_No.2」氏が話題に上り、彼のハンドルネームのような「○○_××」的なネーミングがパソコン通信界において最高にクールだろうということで、「○○_100%」と後半の部分が決定した。

前半の○○がなかなか決まらず、論議を続けながら新宿アルタ前あたりをウロウロしていたところ、metysが「ファジィ」という案を提示。彼は「陳腐化しつつある技術キーワードを敢えて取り入れ、技術トレンドを消費する社会に対するアンチテーゼを」的なことを熱く述べるが、altyと羊男はよく理解できなかった。「ファジィ技術」は、当時の洗濯機等多くの最新家電製品に組み込まれ、一般消費者に対する訴求点でもあったのだが、その手法にエンジニアは何らかの違和感を感じていたのである。

▲Finalty by alty

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3分間だけ、「Bio_100%」は「Fuzzy_100%」だった。

そんな経緯で、彼らの掲げる名称は、一度は「Fuzzy_100%」に決まる。

しかしその後3分も経たないうちに、「ファジィ」を提案したmetys本人が「バイオに変更しよう」と意見を覆す。理由は「やっぱりバイオの方がダサいから」ということであったが、まず「バイオ」が「ファジィ」に対してどうダサいのかがよく分からない。そもそもなぜダサい方を選ぶのかということも意味不明であったが、他の2名はもう疲れていたので、metysの意見に同意したという。

こうして彼ら3人が発起人となるゲーム制作集団「Bio_100%」がついに誕生した。metysは、後に出す書籍などで「Bio_100%の名前に特に意味はない」と説明している。当時、こういったネーミングにもっともらしい由来をつけるような風潮を、metysは個人的にくだらないと感じていたらしい。

なお、altyは当初リーダーを名乗っていたわけではないようだが、『Bio_100% ゲームコレクション PART2』の誌面では「代表」になっている。

▲爆突TURB by 羊男、nanoray

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制作者個人の趣味が色濃く反映されている。だから「Bio_100%」

Bio_100%のゲームは、NECのPC-9801シリーズをメインプラットフォームに40種類以上も発表されており、どの作品も、制作者たち個人の趣味が実に色濃く反映されている。制作者が作りたいものを自由に作っているわけだから、制作に何年も費やした作品もあれば、実験色の濃い奇作もあり、ジャンルもシューティング・アクション・RPG・アドベンチャー・レーシングなどバラエティーに富んでいるのが特徴である。

また、完成に至らずお蔵入りになったゲームも数多い。実際にパソコン通信上でテスト公開をしても、様々な理由でゲームの体を成さず、途中で頓挫してしまうことも少なくなかったという。当時パソコン通信をしていたユーザーには、こういった幻のBio_100%のゲームをプレイした体験があるという人も多いのではないだろうか。

ちなみに『戦国TURB』はドリームキャスト版も発売され、Bio_100%のゲームでは唯一コンシューマータイトルとなっていることにも注目しておきたい。

▲PC-9801用戦国TURB
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