Bio_100% members interview

INTERVIEW:羊男

勢いでいっちゃいましたね。作り方も何も知らないまま

Bio_100%の発起人ゲームの世界観をきっちり作るのが羊男流

元々は絵のために覚えたプログラミングでいつの間にかゲームを作るようになる

-「羊男」という、ハンドルネームの由来を教えて下さい。
羊男:小さい頃から羊が近所にいて、親近感がある動物だったんですよね。「羊男」という言葉自体は、村上春樹の本に出てくる羊男から採っているんですけど。家のそばに獣医大学があって、実験用の羊が飼われていたんですよ。で、身体に穴があけられていて、草を食べると緑の液がポタポタ落ちるんです。そういう屈折した幼少時代を送っているんです(笑)。さらに、ひつじ年生まれだというのもあるし。
-そういうトリプルミーニング的な由来があったのですね。羊男さんが、パソコン通信を始めた経緯というのは……?
羊男:父の職業柄、割と早い時期に我が家にPCがあったんです。初代PC-8801ですね。当時8801のソフトなんてほとんど無い頃だったんで、すぐN-BASICモードにして8001のソフトをテープでロードして遊んでいたんですけど。
-N-BASIC、ありましたねえ。
羊男:でもまぁ、最初はそれほどPCには興味を持たずに、たまに休日にゲームをやるくらいだったんです。しばらくして、父が仕事がらみでモデムを買って来てつないでみたんです。そうしたら、「何だコレは。知らないところからメッセージが流れてきたぞ」と一気に興味を持ちましたね。で、すぐ、ASCII-NETとPC-VANの会員になって、チャット三昧の日々が始まりました。
-ゲーム制作より、パソコン通信のほうを早く体験されているわけですね。
羊男:そうですね。通信をやる前から、I/OとかASCIIとかOh!PCとか、雑誌に載っているプログラムを打ち込んで遊んだりはしていましたけど。
-ゲームはどういう理由で作るようになったんですか?
羊男:元々はゲームではなく、絵を描いてアップロードしていたんですが、使っていた画像圧縮のアップローダーを、仲間内で「使うのをやめよう」ということになったんです。そして、自分で作るしかないと独学でCを勉強して、オリジナルの画像圧縮アップローダーを作った。それでまた画像をやりとりしていたんですけど、こういうプログラムが作れるなら、RPGみたいなものもできるんじゃないかと、作ってみたのがきっかけですね。
-あ、それが『舞瑠華Ⅰ』ですね。
羊男:そうです。僕が最初に作ったゲームですね。
-当時のnanorayさんが、『舞瑠華Ⅰ』に対して、「フリーソフトでここまでやる!? しかもほとんど1人で作ってる」と驚いていましたね。
羊男:RPGをほぼ1人で作るのはしんどかったです。単に絵が表示できたというだけで、勢いでいっちゃいましたね。作り方も何も知らないまま。
-『舞瑠華Ⅰ』の頃は、もうBio_100%には参加していたんですか?
羊男:参加していなかったです。後に出たBio本には『舞瑠華Ⅰ』は収録されているんですけどね。
-では、Bioに参加された経緯というのは?
羊男:そういうRPGとか、対戦ゲームとかを作っていた頃に、ASCII-NETでaltyやmetysとかと知り合って、遊んでいたんですよね。ゲームセンターに行ったり、飲みに行ったりとか。それで参加することになったんですね。
-当時は、ネットで知り合った人と気軽に飲みに行ける平和な時代でしたよね。今だと少し怖いですが。

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いろんなジャンルのゲームを手がける多才な羊男氏 レースゲームを作らなかった意外な理由とは?

-当時は、ファンの方とも交流なんかはありましたか?
羊男:はい。ファンの方からはよくメッセージをいただいて、もうそれが当時のモチベーションの元でしたね。一番嬉しかったのが、目の見えない人が、僕のテキストアドベンチャーを音声合成の装置か何かを通して遊んでくれて、お礼のメッセージを送ってくれたことです。人の役に立つことができたなぁと、本当に嬉しかった。
-それが『ある勇者の憂鬱』ですね。
羊男:そうですね。あの作品は、本当に自分が落ち込んで憂鬱だったときに、一晩徹夜して作ったんです。単に自分のはけ口的なところがある作品なんですが、それをちゃんとそこまでして遊んでいただいて、メッセージまでいただいて、すごく感動しました。そういう声がリアルタイムで聞けるのがネットの良さでしたね。今では当たり前かもしれないですけど。
-『ある勇者の憂鬱』の切ないテキストというか、世界観が好きなんですが、羊男さんは、元々文章を書かれていたんですか?
羊男:いえ、そういうことは全くないです。
-でも、そう思わせられるくらい、テキストが素敵でした。だから、憂鬱な時に作ったと聞いて少し驚いたんですけど。
羊男:僕は、ちょっと嫌なことがあるとすぐ落ち込んでしまうんですよ(笑)。
-羊男さんの作るゲームは、『MARKADIA』や『Owl-Zoo』など、シューティングにもきちんとバックストーリーが設定されていたりしますよね。やはり、そういう部分を大事にされていたのでしょうか?
羊男:そうですね。世界観みたいのはきっちり作る。例えばゲームプレイには直接関係ないことであっても、裏の設定などはきちんと作って。
-ゲームを作る前に、まず背景を決めていくのが羊男流ということでしょうか?
羊男:まぁ、ケースバイケースではあるんですけどね。例えばちょっとしたプログラムの実験をしてて面白い動きが発見されて、それでゲームを作ろうとすると、まずそのキャラが頭の中で動き出して世界が出来上がっていく。それから実際のデータに落としていってゲームを作っていくというのはありますね。
-羊男さんが作るゲームは、RPG、アドベンチャー、シューティングなど、ジャンルが多岐に渡っていますが、当時は、あえて色々なジャンルに挑戦していたのでしょうか?
羊男:たまたまですよね。思い浮かんだ世界を表現するのに合うジャンルを選んでいったら、たまたまそうなっていったのかもしれない。ただ、将棋みたいな、シミュレーション系は苦手なので手は出してないですね。自分がプレイできないゲームは作ってない。
-他に羊男さんがトライしていないゲームジャンルといえば、レースゲームぐらいでしょうか。
羊男:レースゲームは作ってないですね。僕は、Bioのゲームでは『POLESTAR』が好きなんですが、あれを見ちゃうとレースゲームは作れないです。『POLESTAR』はすごかったですね。隕石が落ちてきて半分地面にハマッている絵に、「かっこいい!」と感動した記憶があります。レースゲームといえば、あとaltyの『CarⅡ GRANDPRIX』。当時、3Dと2Dの素晴らしいレースゲームを見せ付けられた感じでしたね。
-羊男さんは、ご自身のゲームで、プログラム、シナリオ、グラフィックなど、色んな部分を1人で担当されていたりして、多才だなぁと思わされます。
羊男:人に頼むのが下手というのがあるんでしょうね。頭の中では、作り始める前から完成したゲームが動いているんですが、口ではなかなか人に説明できないので、自分でやってしまうという。あまり理論的な人ではないので。数学なんかも全然ダメで大嫌いで。
-意外です。得意そうに見えますが。理系タイプに見えるというか。
羊男:そう言われるんですが、全然ダメですよ。どちらかというと、動物とか、昆虫とかが大好きで(笑)。
-そういえば、子供の頃、よく泳がれていたそうですね。
羊男:水泳は小さい頃からやってました。高校も水泳部だったし。スイミングクラブで習ってて、ジュニアオリンピックとかにも出て。そういうのがあったんで、すぐにはPCにはハマらずに、最初は毎日泳いでいるような学生時代を送っていましたね。

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【羊男 data】
●ハンドルネーム:羊男(ひつじおとこ)
●本名:増谷正男(ますたにまさお)
●生年月日:1967年8月2日
●出身地:東京都
●現在の職業:ゲームの制作
●既婚 or 未婚:既婚
●趣味:子供の成長を眺めること
●好きな当時のゲーム:
『ザナドゥ・シナリオⅡ』
●一番好きなBio_100%のゲーム:
『POLESTAR』

未だに交流を続けるファン、そしてファンの言葉を真摯に受け止める姿勢、それがBioで得た財産

-最近はハマっているゲームなどはありますか?
羊男:時間が無くて、あまりゲームは遊べていないですね。今月ちょっと仕事がひと段落したんで、『ファイナルファンタジーXI』を久々にやりましたけど。僕はギルドみたいなものを作ってあるんですが、そこにいる仲間たちは、以前ドリームキャストとかで僕のゲームを遊んでくれていたファンの人たちだったりするんです。コミュニケーションツールとして使っている感じですね。立ち上げておいて、みんながお喋りしているログを眺めてるのが楽しい。
-そういうつながりが未だにあるというのが素晴らしいですね。
羊男:Bioでゲームを作っていた頃も、遊んでくれた方から「面白かったですよ」と反響をいただけることが一番嬉しかったですから、昔からファンと結構交流を続けていたんです。最初は『ファンタシースターオンライン』が出た頃に、オンラインでもお喋りしようということで集まっていたんですけど、そこからゲームが移って未だ交流が続いている感じですね。当時高校生だった子も、もうすっかりおじさんになっていたりと(笑)。
-他にも、Bioでの活動が羊男さんに与えた影響はありますか?
羊男:Bioのせいで、ゲーム開発がそのまま仕事になってしまったという(笑)。現在、派遣社員みたいなカタチでゲームを作っていて、いろんなプロジェクトに参加させてもらっているんですが、その中で、遊んでくれた人からの言葉を真摯に受け止める姿勢はプロになっても変わらなくて、それもBio時代からの影響ですよね。
-現在、羊男さんが夢中になっていることがあれば教えて下さい。
羊男:子供の成長を眺めることじゃないですかね。1歳半の子供がいるんですけど、もう毎日変わりますから面白いですよ。昔は小さい子なんてうるさくて大嫌いだったんですけど、今は保育士になってもいいと思うくらい(笑)。こないだ子供が行ってる保育園に行ったら、よその子たちも集まってきたんで一緒に遊んだりしましたけど、かわいいですね。
-将来、お子さんと一緒にゲームをやったりしたいですか?
羊男:そこ少し悩んでるんですよね。子供にはゲームさせたくないんですよね。でも無理でしょうね、もうマウスカチカチやってますから(笑)。キーボードバンバン叩いたり、パッド握り締めたり。
-自分は子供とゲームで対戦するようになったら、絶対手は抜かないつもりなんですが、どうですか?
羊男:まあ僕も抜かないでしょうね(笑)。父も昔、キャッチボールやってくれたけど、全然手加減なしでしたからね。
-ちなみに、奥様はゲームはやるんですか?
羊男:たまにですね。結婚する前とか、『ディアブロ』やらせてみたらハマっちゃって、かなり放っておかれたことがありましたよ。
-奥様は羊男さんのBio時代の詳しい経歴などは知っているんですか?
羊男:いや、全然知らないですよ。自分のゲームを立ち上げて見せたことなんかは一度もないですね。
-奥様がこのインタビューを読んだら、分かってしまいますね。
羊男:ですね。そのうちいい批評家になってくれるかもしれないですね(笑)。
-今後、挑戦してみたいことはありますか?
羊男:子供ができたせいもあるかもしれないですけど、絵本を描きたくて。歳を取ったら絵本作家だなあ、とか思ってるんですけどね。お話考えるのが好きだったんで、未だに日々ネタを考えているんです。
-それでは最後に、羊男さんにとって、Bio_100%とは何だったんでしょうか?
羊男:自分の中で「ものさし」になっているという気がしますね。当時の自分はここまで頑張れた、ここまで1つのことに情熱を傾けられたという。今は歳も取って腰も重くなって、やりたいことはあるのになかなか行動に移せなかったりするんですけど、あの時はあれぐらいできたんだから、まだまだあきらめちゃいかんとか、そういう基準になってくれていますね。

(収録日:2008/5/28)

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