Bio_100% members interview

INTERVIEW:fin

作りはまんま演歌ですね

Bio_100%ミュージックの“Final Weapon”BEEP疑似3重和音で起こした奇跡

Bio_100%との出会いをもたらしたパソコン通信とBEEPでの曲作り。

-まずパソコン通信を始めるようになった経緯を教えていただけますか。
fin:STUDIO☆FEMYというBBSに僕の弟がアクセスしていまして、そこで公開されていた『MJ』というゲームがあったんです。それにはすでに曲がついていたんですが、弟が新たに曲を作って「使ってください!」と割り込んだところ、作者の方が喜んで使ってくれたんですね。その一連の話と「すぐにレスポンスが返ってきて面白いよ」ということを弟から聞かされまして、僕も興味を持ちました。
-STUDIO☆FEMYの主催は、Bio_100%のメンバーであるfemyさんですよね。ということは、そのときBio_100%はすでに存在していたんでしょうか?
fin:すでにありましたね。当時のサウンドはBEEPの1音を、高速に切り替えて疑似的に3音出していたんですが、その3音という制約に、あえてそれにトライしてみたくて、曲を作ってSTUDIO☆FEMYで提供していたんですよ。そうしたら、それがaltyの目に止まったようでして。
-ではaltyさんのほうからBio_100%への誘いがあったということですか?
fin:確か一度femyの家に遊びに行ったとき……、いや、羊男の家に遊びに行ったときかもしれないなぁ。とにかくそこにaltyもいまして、これからも曲を提供していきたいというか、一緒に遊びたいなと思って、僕のほうから入れてとお願いしたんですよ。そしたら酒に酔ってたせいか、彼は二つ返事でオーケーしてくれましてね。あのときシラフだったら、ちょっと待て、ということになっていたかもしれませんねぇ。なにはともあれ、それがBio_100%に入ったきっかけです。
-finさんのハンドルネームの由来を教えていただいてもよいでしょうか。
fin:昔、アーケードゲームがすごく大好きだったんですけど、当時はハイスコアを出すとネームエントリー時に3文字だけ入力できたんです。そこでAからタカタカとカーソルを移動させていくと、FからNは順に並んでて入力しやすかったんですね。
-では、その名前自体に特に意味はないんでしょうか?
fin:あったんですけど、秘密です。恥ずかしいので(笑)。
-でも今回、改めてBio_100%を振り返ってということで、皆さんカミングアウトしてくださってますよ。
fin:うーん、それじゃ言っちゃいますけど、当時、アーケードゲームのサークルがあったんですよ。例えば『ゲーメスト』って雑誌はVG2というサークルが元になってるじゃないですか。僕もそんな感じのところにいたんですね。小さなサークルでしたが、副会長だったりしたんです。そのときにちょうど某格闘ゲームが流行りまして、ゲームセンターでやり合っていたときに“最終兵器”、いわば“Final Weapon”という意味を込めて頭の3文字をとったという……。恥ずかしい過去ですねぇ。
-なるほど。そういう意味があったんですね。ちょっと気になったんですけど、『SuperDepth2 Finalty』の「Finalty」の部分は、finさんとaltyさんのハンドルネームをくっつけたものなんでしょうか。
fin:そうですね。僕が思うに、あれはaltyの史上最大の失敗ネーミングだったんじゃないかと(笑)。でも改めて言うまでもなく、『Finalty』の由来は当時の人なら皆さん知ってると思うんですが……。あ、でも、どこかに書いたりはしてなかったかもしれませんね。

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たった3音を駆使するからこそBEEPでの曲作りは面白い。

-当時、好きだったゲームというのはありますか?
fin:コンシューマーゲームはやらなかったんですけど、それ以外はアーケードゲームを筆頭になんでもやりましたね。
-その中でもベストをあげるとすれば、何になるでしょう?
fin:ゲームの内容というよりもミュージックで選んでいた時代だったので、ナムコ系統、コナミ系統、タイトー系統の作品が好きでした。
-ゲームミュージックが一番ゲームミュージックらしい時代でしたよね。
fin:ナムコのゲームミュージックは今聞いてもいいですよね。『リブル・ラブル』が大好きでした。コナミの作品では『グラディウス』の4面の逆火山の曲が大好きでしたね。
-結構、王道な印象を受けますが。
fin:そうですね。でもそのおかげでPSGのよさを知ることができました。それはBEEPでの曲作りにも通じているんですけどね。といっても僕自身が作ったものはあまりゲームミュージックのつもりはなくて、とにかく気分が楽しくなる曲が書きたかったんですよ。
-BEEPであれだけしっかりした曲が作れるものなのか、と当時は驚かされました。
fin:BGMLIBって3音しか出せなかったんですけど、ひとつはベースに使って、もうふたつをどう使うか。片方は多分主旋律に使って、もう片方は和音を入れたり、オクターブを重ねたりするんですけど、それだけじゃ寂しいのでオカズを入れてみたり、色々動かしてみたりするんですね。で、その3音での曲作りというのに目覚めてしまいまして。たった3音なのに駆使すると面白い!
-正直、3音とは思えないですよ。
fin:ピアノをやってた関係で、音って無限だと思ってたんです。ピアノなんて88鍵叩けば全部音が出るわけですし。でも3音という制約の中で、休符の部分にも他の音が出せるんだっていうことに気がついて、それから道が開けましたね。
-『CarⅡ GRANDPRIX』の曲はかっこよかったですよねぇ。
fin:あれは開発中、ずっとFM音源で鳴らしてたんです。でも音源ドライバーとスクロール処理の相性がうまく合わず、それが最後まで解決できなくて、結局BEEPになってしまったという裏話があります。
-そのFM音源の曲はお蔵入りになってしまったんですか? それとも何か別のゲームで使われたとか。
fin:お蔵入りになりました。『CarⅡ GRANDPRIX』専用に作った曲なので、他の作品には使えなかったと思います。それにFM音源の曲は尺が3分あったにも関わらず、あのゲームは速い人になると1分前後でゴールしてしまうんですよ。
-となると肝心のサビが聞けない?
fin:そうなんですよ。よくaltyには「曲が長い」と言われました。『Finalty』のオープニングの曲も「長いよ」と。それでがんばったのが『NyaHaX'93』です。すごく短くワンループするようにして、でもそれじゃ途中で飽きちゃうので転調したり、また戻したり。そんな感じで作りましたね。

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ゲームミュージックに欠かせない要素は鼻歌が歌える演歌であること?

-元々finさんが音楽を始めたきっかけというのはなんだったのでしょうか?
fin:あのですね、初恋がですね、お隣にいた音大生の女の人だったんです。親が楽器ぐらいはやらせたいということで、その音大生のお姉さんのところでピアノを習うことになったんですけど、それが音楽を始めるきっかけでしたね。僕が幼稚園のときの話なんですが。
-幼き日の恋心が音楽への情熱に転化されていったという感じでしょうか。そんなfinさんが曲を作る上で一番大切にしていることはなんでしょう?
fin:鼻歌が歌えることです。メロディーがはっきりした曲っていいじゃないですか。昔の曲ってみんなそうなんですけど、和音とかでごまかすのではなく、ちゃんとメロディーがあって、それさえ覚えておけばコードとか何もいらずに口ずさめる。
-キャッチーであることとはまた違うわけですか?
fin:ちょっと違うかな。ぶっちゃけて言ってしまえば演歌なんですよ。オカズも入れて、泣きの部分もあって。作りはまんま演歌ですね。演歌ってすごいんですから、ホントに。
-影響を受けたミュージシャンはいらっしゃいますか?
fin:坂本龍一です。『シェルタリングスカイ』っていう映画の曲があったんですけど、映画の内容は置いておくとして、それがとてつもなく暗い曲なんですね。本当に暗くてまさに演歌なんです。ストレスがかかるような暗い曲っていうのは、普通どこかで転調させたり、明るい部分を入れたりして発散させてあげるものなんですけど、最後まで暗いんですよ。その救いのなさが妙に好きなんですよねぇ。
あと、実弟の曲がたまらなく好きです。彼は、僕には書けない素敵な音を創ります。一番影響を受けたのは、誰でもなくNEW君だったかも知れません。Finaltyのオープニングとか、彼が書いたラスト20秒に衝撃を受けて、そこへ繋ぐ‘つかみ’の部分をつくったんです。
-当時の作曲環境というのはどんな感じだったんでしょうか?
fin:いろんなパターンがあったんですけど、当時PC-88VAという変な機種を持ってまして、そのマシン上で実際の音符をMMLに変換するためのBASICのコンパイラを作ったりしてたんですよ。それでまず曲の組み立てをすることもありましたし、いきなりシンセサイザーで自分の思うようなものを作ることもありました。そのときはそこから3音だけピックアップするんです。で、空いた時間にどんな音を入れられるか。ユニゾンするのもあり、和音を入れるのもあり、ディレイさせるのもあり。そんなことばかり考えて曲を作ってましたね。
-作曲作業はPC-88VA上で行うことが多かったわけですね。
fin:そうですね。PC-88VA上でMMLにして、それをさらにPC-9801上に移すという作業をしてました。
-曲の提供はどのような形で行っていたのでしょうか?
fin:だいたい完成に近づいてきたゲームを見せてもらって、これにつける曲を作ってほしいと言われる感じでしたね。で、それに合わせるものを5~6曲作っていって、採用されるのは1曲とか2曲じゃないですか。でもaltyは余ったものをどんどん他のところに使っていっちゃうんです(笑)。ところがそれが意外にハマっていたりして、ここはこれでアリなんだ、と思わされることもよくありましたね。

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【fin data】
●ハンドルネーム:fin(フィン)
●本名:市川宜敬(いちかわたかゆき)
●生年月日:1970年6月2日
●出身地:埼玉県
●血液型:AB型
●趣味:内燃機関
●好きな当時のゲーム:
ナムコ系、コナミ系、タイトー系
●一番好きなBio_100%のゲーム:
『SuperDepth』

作り手と遊び手がすぐにつながる環境はまるでオモチャ箱のようだった

-当時、Bio_100%で活動していて、どういう部分が楽しかったですか?
fin:毎日が夢の世界でしたよ。うまく説明するのは難しいんですが、やはり自分の作品に対してレスポンスがすぐ返ってくるというのは、当時では考えられない環境でしたから。作った人とすぐつながるし、こちらからすれば遊んでくれた人とすぐつながる。それがとても楽しかったですね。今ではもう普通になっちゃってますけど。
-ユーザーの意見を聞いて、曲に手を入れたりしていたのでしょうか。
fin:いや、そうでもなかったり……。実は曲を直す前に自分の手元からなくなっちゃうことが多かったんですよ。間違って消しちゃったりとかして。EXEファイルから抜き出すのも面倒でしたし。ごめんなさい。
-altyさんやmetysさんに曲を提供したときも、一発で通していたんですか?
fin:それは結構注文がありましたよ。長くしてくれとか短くしてくれとか。でも短くしてくれと言われることが、やっぱり多かったですね。ただし演歌の組み立ては崩せないので、そこだけは譲りませんでしたけど。
-ちなみにBio_100%のゲームの曲では、どれがお気に入りですか?
fin:何もないんですよ。
-何も……。ちょっとショッキングな発言ですが。
fin:自分の曲で、本当に好きになれた曲ってないんです。もうちょっとこうしなきゃ、って常に思うんですよ。ここをこうしておけばよかった、あそこをああしておけばよかったと、未だに後悔してるものですから。
-では音楽抜きにして、純粋に好きなゲームということではどうでしょう?
fin:となると、やはり『SuperDepth』です。当時は縦スクロールなら縦スクロール、宇宙なら宇宙とゲームシステムがカチッと決まっているのが当たり前でしたけど、『Depth』は海と空と宇宙、それぞれシステムの異なるゲームが3つ合わさってましたからね。あれはヤバかった!
-当時はアーケードにもそんなゲームはありませんでしたよね。
fin:あれは多分タブーだったと思うんですよ。やっちゃいけなかったことだったんだと思う。でもそのタブーにモロに踏み込んで、それなりに仕上げちゃったもんだから、多くの人を惑わすことになってしまったんでしょうね。
-最後に、finさんにとってのBio_100%とは?
fin:オモチャ箱ですね。『夢のオモチャ箱』でした。

(収録日:2008/6/4)

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